COMMEMORATIVE TALK

第73回日本消化器外科学会総会 記念企画
理事長鼎談

1984年 専門医制度発足

瀬戸
さて,今,喫緊の重要な課題でありますけれども,1984年に本学会の専門医制度が発足しました.本学会の専門医制度は非常に優秀で,最近の議論の中でも,例えば内科とかから比べても模範とすべき専門医制度であるという評価もいただいております.NCDを使うといろいろなデータが出てきます.これは食道とか肝臓とか膵臓とか難易度が高い手術ほど専門医の関与比率が高いというデータであるとか,あるいはこれは今野先生がまとめられたのですけれども,専門医一定数の関与により手術死亡率が低下するというようなデータがNCDを使って出てくる.
 このスライドは意外に見たことのある先生は少ないかもしれません.これは金沢大学の太田先生が中心にまとめられていて,本邦の地域の医療需要を反映した専門医研修プログラムを作成するための二次医療圏単位での医療の実態把握ということで,今後の専門医制度の分布とかそういったときに非常に重要な参考になる論文です.これも実はNCDを使ってまとめられたのでちょっと御紹介すると,消化器外科手術には低難度,中難度,高難度というのがあるのですけれども,患者さんがいる二次医療圏単位で考えると,高難度手術になるにつれて,自分のいる二次医療圏内での達成割合が下がる.難しい手術の場合は外に出ていく.要するに集約化が実は結構始まっているというデータで,なおかつ消化器外科専門医が多いほど,二次医療圏内での達成割合が高いということで,先ほどのデータも合わせると,消化器外科の専門医というのは非常に重要な地位を占めているということがわかります.
 ただ一方,これは袴田先生がまとめてくださったスライドなのですけれども,現行の専門医制度では初回受験の時期が平均すると39歳.要するに医者になってから14年目ぐらいということで,これがちょっと遅い.それだけハードルが高いのではないかということと,一番の問題が,入会しても消化器外科の専門医を受験する人が33%しかいないという問題があって,こういった問題を踏まえて,本年,2018年から新しい専門医制度が発足します.
 この発足するまでの過程において,我々も専門医機構にヒアリングに行きました.39歳で初めて取れる,14年かかるということなどを踏まえると,ざっくばらんに言うともっと簡単にしてほしい,取りやすくしてほしいという要望が出ました.いろいろな地域に専門医がいてもらわなくては困るということもあって,我々消化器外科の現理事,あるいは専門医制度を担当する先生方の中で議論いたしまして,その詳細についてはきょう評議員会の中で袴田先生が新しいプログラムを紹介してくれることになっておりますが,少なくとも我々も変わっていかなければいけないのではないかということを今認識しているところです.北野先生,御意見はいかがでしょうか.
北野
時代の流れに応じて私たちは変わるべきであるし,チェンジこそ生き残り,さらには私たちの学会のスタンスを示していく上で大変重要だと思います.その中でやはりバランスを考えていただいて,すべてが専門医になるのか,あるいはバランスで専門医を配置するのか,そのあたりをよく議論をしていただいて進めていただきたいと思います.
瀬戸
杉原先生,一言お願いいたします.
杉原
今は疾患構造が大分変わってきて,この専門医制度で技術を磨くのは大抵がんですね.消化器がんになっております.そうすると,先ほど瀬戸先生が少しお話しされましたが,集約化が必要な疾患とコモン技術として対応すべき疾患,2つに分けて考えていく必要があると思うのですね.専門性が非常に高い,例えば食道とか膵臓がん,肝・胆道系のがんになると,かなり厳しく設定してもいいと思います.もう1つは,大腸がん,胃がんのようなコモン技術になりますと,その専門医というのはもうちょっとやわらかくする.その2つの方向性を持ってやっていけばいいのではないかという気はいたします.
瀬戸
ありがとうございます.森先生,御意見を.
消化器外科学会としては,サブスペシャルティの外科のほかの領域,あるいは内科のほかの領域,私もそういう会に絡んでいたのでいろいろ見る機会があったのですけれども,消化器外科学会は日本のサブスペシャルティの専門医の中ではかなり厳しいというか,かなりしっかりやっているというところがあります.ですので,ここは少し門戸を広げていいと思いますし,先ほど杉原先生がおっしゃったところに関しては,消化器外科の上にさらにサブサブスペシャルティというか,3階建ての肝胆膵外科,食道外科,大腸肛門病はまだですけれども,そういう各臓器のより高い専門性を有するところがありますので,そこはそこでさらに精度を高めていく形をとったほうがいいと思います.
瀬戸
ありがとうございます.貴重な御意見をいただきました.

これからの課題:若手の外科離れ

瀬戸
さて若手の外科離れが問題で,これについてはしっかり考えていかなくてはいけないのですけれども,その中にあって夏越会長が始められたJESUSという若手医師に消化器外科を知ってもらうためのイベントが,先ほどのシンポ,特別企画でも話題になりました.このJESUSがきっかけになって消化器外科医になったという人たちも結構いらっしゃる.現時点でJESUSに参加した,まだ専門を決めていない人たちも含めても,34%が消化器外科になっているという数字を見ても,ぜひこういった企画をどんどん推し進めていきたいと思います.

これからの課題:女性外科医

瀬戸
もう1つは,女性外科医の問題であります.先ほど女性外科医の方からもシンポジウムで発言をいただいたのですけれども,働き方というのは大事であるということで,我々消化器外科の中でも特に専門医はこれから重要になると思うのですが,昨年の段階で6,438人専門医がいて,その中で女性はまだ2.8%にすぎないということを考えると,我々としても働き方というのを真剣に考えていかなくてはいけないのかなと思います.

記念誌について

瀬戸
最後になりました.今回50周年記念ということで記念誌の発行を予定しております.今回の鼎談の内容もそれに載る予定なのですが,実はこれまでいろいろな記念誌が発刊されております.これは第38回のときの筑波大学の岩崎先生が出されました.その中で例えば塩野七生先生とか,ノーベル賞の福井先生とか,千宗室先生,いろいろな方がいろいろな意見を寄せていただいて,こんな記念誌が出ているのですね.
 これは水本先生がされた第40回記念のときのこんな記念誌があります.最近で言うと,50回の記念として,これは比企先生がされたときにこういった記念誌をまとめられておりまして,その中でこれは僕の大ボスなのですけれども,石川浩一先生が経緯を触れられている.もう1つ大事なのは,ここに50回記念の中で本会の創立者のお一人である中山恒明先生について羽生先生と比企先生が対談されております.その中で本当に懐かしい,昔の写真も載っております.これが東京女子医大旧舘外科教室で,実は今回,山本先生と女子医大の教室の方々の御厚意をいただいて,中山恒明先生が実際に使われた手術道具等をかごしま県民交流センター6階に50周年記念展示として展示してありますので,ぜひ先生方,一度お足をお運びいただいてごらんいただきたいと思いますし,パネルのところでも中山恒明先生の手術ビデオがずっと流されておりますので,ぜひごらんいただければと思います.
 50周年記念誌ということで,実際の発刊は来年を予定しておりますが,発行がされた暁には先生方のお手元に届く予定でございますので,ぜひごらんいただいて,一緒に今後のJSGSの次の50年をお考えいただければということで,この鼎談を締めさせていただきたいと思います.北野先生,杉原先生,森先生,本当に貴重な御意見ありがとうございました.皆さん,どうもありがとうございました.
理事長鼎談